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Joint surgery / sports injury 関節外科・スポーツ外傷

About anterior cruciate ligament injury 膝前十字靭帯損傷について

今回は現在当院が特に治療に力を入れております膝前十字靭帯損傷に対する解剖学的2重束靱帯再建術と変形性膝関節症に対する人工関節形成術についてお話します。

膝前十字靭帯損傷に対する解剖学的2重束靱帯再建術 膝前十字靭帯損傷とは 膝関節には、前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、内側側副靭帯(MCL)ならびに後外側支持機構(PLLA)と言われる4本の靭帯があります。ACLの役割は、前方動揺性(脛骨の前方へのズレ)、回旋動揺性(ねじれ)を抑えることです。本靭帯を損傷した場合、スポーツ動作時(ダッシュ、ストップ、ジャンプならびに方向転換等)に脛骨が前方にねじれながら亜脱臼し膝崩れを起こします。また膝崩れを繰り返すことによって二次的に軟骨や半月板が損傷されます。

受傷機転ならびに診断

受傷機転としては、バスケットボールやバレーボールのジャンプの着地、スキーの転倒、ラグビーやサッカーのコンタクトによって膝関節を捻った際によく受傷します。受傷時の症状としてはブチッあるいはボキッという音や感触、膝の疼痛(いたみ)ならびに腫脹(はれ)が認められます。しばらく時間が経過すると膝崩れやはずれる様な不安定感、ロッキング症状(膝関節が急に動かなく)が認められます。以上の症状が起きた場合、必ず整形外科を受診してください。適切な診察とMRIを始めとする画像診断を行ってACL損傷の有無をチェックしたうえで、適切な治療を行う必要があります。一般に本靭帯損傷を放置すると受傷前と同等のレベルでのスポーツを行うことは困難であり、二次的に軟骨や半月板が損傷され変形性関節症(老人性変化)につながります。若い方ならびにスポーツを積極的に行われている中高年の方には手術をお勧めします。

手術による治療について

手術は従来においては靭帯を縫合する方法も行われていましたが、現在は再建術といわれる靭帯を作り直す手術が主流です。再建術にはいろいろな方法がありますが、当院では以前より症例に応じて膝蓋腱あるいはハムストリング(膝の屈筋腱:大腿骨の後ろの筋肉)を使用し関節鏡を用いた低侵襲な方法(可能な限り関節を開かずに手術を行う)を行ってきました。現在は2005年5月以来、ハムストリングを用いて2重束2ルート靱帯再建術を行っています。簡単に言い換えれば採取したハムストリング腱を重ね合わせて2本の5~8mmの太さの腱を作り、靱帯の元のあった位置に大腿骨と脛骨にそれぞれ2カ所の骨の穴を空けて靱帯を通す手術です。
この2重束2ルート靱帯再建術は従来の1重束靱帯再建術に比べて、移植腱移行部の接触面積が広いため、移植腱移行部の治癒が早める効果があります。また、本来あるべき位置に移植腱を挿入できるため、より解剖学的再建が可能となりました。さらに2本の靱帯がそれぞれストレスを分散するために1重束靱帯再建術比べ再断裂が少なくなっています。

大腿骨側は、トランスフイックスピンとエンドボタンを使用して靭帯を固定します。脛骨はステープルとソフトスクリューにて固定します。

術後のリハビリついて

現在行っている解剖学的2重束靱帯再建術は可能な限り関節を開かずに手術を行う低侵襲な手術方法なために、平均的には、術後2日より疼痛の軽減を待って、前十字靭帯用の装具を装着して、関節可動域訓練開始、術後5日より部分荷重、術後14日より1本杖による歩行、術後3週にて退院可能となります。約2~3カ月でジョギングを開始、6~10カ月にてスポーツの種類ならびに移植腱の状態をみてスポーツ復帰を行っています。

About knee osteoarthritis 変形性膝関節症について

変形性膝関節症ってどんな病気? 膝関節の軟骨がすり減り、関節炎や変形を生じて、痛みなどが起こる病気です。正常の膝関節では関節の表面は軟骨で覆われています。弾力性に富んだ組織からなる軟骨は、衝撃を和らげたり、関節の動きを滑らかにしたりしています。
また、滑膜から分泌される関節液は軟骨の成分の1つであるヒアルロン酸を含んだ粘りのある液体で、膝関節がスムーズに動く潤滑油と軟骨の栄養の役割を果たしています。初期の変形性膝関節症では、軽度の関節軟骨の磨耗が生じますが自覚的な症状はほとんどありません。軟骨の磨耗がある程度すすむと(中期)、膝の曲げ伸ばしや立ち上がり、歩行時の膝にかかる負担の増加および軟骨、半月板の変性による刺激により関節炎が生じます。関節炎では、膝を曲げ伸ばししたときの痛み(動作時痛)や曲げ伸ばしの制限(可動域制限:かどういきせいげん)が生じます。また、関節液が多量に分泌されて関節に「みず」がたまること(関節水腫:かんせつすいしゅ)もありますが、関節内のヒアルロン酸は逆に減少します。進行期の変形性膝関節症では、軟骨の磨耗がさらに進み関節の土台の骨(軟骨下骨:なんこつかこつ)が露出したり骨棘(こつきょく)といった骨そのものの変形が生じたりします。この状態では、膝を動かしたり立って歩いたりするたびに硬い骨同士が直接ぶつかり合うため強い痛みを生じ、曲げ伸ばしの制限も高度となり日常生活において大きな障害となります。

変形性膝関節症の治療方法 変形性膝関節症の治療方法には、大きく分けて保存療法と手術療法の2つがあります。保存療法にはリハビリテーション、装具療法、物理療法、薬物療法があり、これらを組み合わせて行われます。手術療法は、保存療法で効果が得られない場合に選択されますが、この数は決して多くはありません。変形性膝関節症は、加齢による関節の変化が主因なので、関節の機能を維持しようとする患者さん自身の気持ちとがんばりがとても大切です。

変形性膝関節症の治療方法(保存療法)

リハビリテーション 変形性膝関節症に対するリハビリテーションの目的はひざの曲げ伸ばしの回復(可動域訓練)とひざを支える筋力の回復(筋力訓練)です。関節の2大機能である可動性と支持性を回復させるリハビリテーションは変形性膝関節症の治療のみならず予防法としても大変重要であり、多くの人に積極的に行っていただきたい内容です。
可動域訓練 可動域訓練は、変形性膝関節症によって関節の動きが悪くなったり、動く範囲が狭くなったりした場合に、その動きの改善や動きの範囲を広くするために行われます。
ひざの曲げ伸ばしの訓練は、まずひざを温めてから行うと痛みも少なく関節や筋肉も柔軟になっているのでより効果的です。蒸しタオルを10分程度ひざに当てたり、入浴時に浴槽のなかで訓練したりするのが良いでしょう。
筋力訓練 変形性膝関節症では、太ももやひざの周りの筋肉を鍛えてひざ関節を支える力を強くすることが大切です。仰向けに寝た状態や椅子にすわった状態で片方の脚を伸ばし(寝た状態では30~45度位に挙上)、そのまま10秒ほど支える方法はひざ関節を支える筋肉として1番重要な大腿四頭筋の力を鍛える簡単な方法としてお勧めです。また、水中歩行などプールでの運動は浮力のためにひざへの負担が少なく筋力をつけるのに大変有利です。

変形性膝関節症の治療方法(保存療法)

変形性膝関節症の手術療法は、保存療法で効果が得られない場合に選択されますが、この数は決して多くはありません。変形性膝関節症は、加齢による関節の変化が主因なので、関節の機能を維持しようとする患者さん自身の気持ちとがんばりがとても大切です。

手術の種類 具体的な手術内容
関節鏡視下手術 ひざの中にカメラ(内視鏡)を入れて行う手術です。 関節内を観察しながら、変成した半月板や軟骨、増生した滑膜や骨棘の処理を行います。
創(キズ)も小さく、手術後数日で歩行が可能で、早期に社会復帰ができます。
ただし、効果の持続性が短い場合もあります。
高位脛骨骨切り術 脛骨のかたちをかえて、O脚を矯正し、ひざの内側にかかる負担を軽減する手術です。 矯正した骨の部分がくっつくまで2~3ヶ月を必要としますが、重労働やスポーツを含めて活動できるまで回復します。
ひざの変形が中等度で内側にとどまっており、40~60才代の方で比較的日常活動性の高い方が治療の対象となります。
人工関節置換術 変形した関節の表面を金属などでできた人工の部品で置き換える手術です。 ひざ全体が大きく変形し、痛みが強く立ち座りや歩行など日常生活に支障をきたす場合に行われます。
痛みを取り除く効果は高く、日常生活に支障をきたすことはなくなりますが、正座などの深い曲げ伸ばしや運動などの無理は制限されます。
人工関節置換術には、関節の表面全体を置き換える全置換術と部分的に置き換える単顆置換術(たんかちかんじゅつ)の2つがあり、関節の変形の程度などによって選択されます。

About knee Arthroplasty 人工膝関節について

・全人工膝関節置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)
・単顆人工膝関節置換術(UKA:Unicompartmental Knee Arthroplasty)

全人工膝関節置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)

全人工膝関節置換術(TKA)は、変形性膝関節症や関節リウマチなどにより変形した膝関節を金属・ポリエチレンなどでできた人工関節に入れ替えることで、膝関節の痛みをとる手術です。

手術時間 約1時間半~2時間
麻酔 全身麻酔
入院期間 約3週間

人工膝関節置換術を受けられた患者さんの術後成績・満足度をあげるために

・術後疼痛軽減(神経ブロック・術後関節内カクテル注射)
・適切な膝関節バランス(プレカット法など)
・適切なインプラント設置(術中簡易ナビゲーション)

などを導入しています。

単顆人工膝関節置換術(UKA:Unicompartmental Knee Arthroplasty)

患者さんの膝関節の状態によっては、痛んでいる膝の内側や外側の片側の関節のみを人工関節に置換することも可能です。それがUKAです。
手術の侵襲(出血・傷の大きさなど)も少なく、靱帯も温存できるので術後のスムーズなリハビリテーション・早期回復が期待できます。

手術時間 約1時間半
麻酔 全身麻酔
入院期間 約2週間

TKA・UKAそれぞれにメリット・デメリットあります。
外来にて患者さんの膝関節の状態を診察・画像診断(レントゲン・MRI・CTなど)で評価し、どちらの術式がよいか相談させていただけたらと考えます。

人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)

変形性股関節症や大腿骨頭壊死、関節リウマチの関節病変など様々な病気のために股関節の軟骨が変性しすり減り痛みが出現します。
保存加療をおこなっても改善しないときは、人工股関節置換術(THA)をおこないます。

THAの手術を受けられた患者さんが術後快適な生活を送ってもらうために

・正確なインプラント設置
(術前3D計画・術中ナビゲーション)
→脱臼予防・良好可動域

・アプローチの工夫
(前方系アプローチ・筋肉温存型の後方アプローチ)
→脱臼予防

をこころがけて手術をおこなっています。

術前3Dテンプレート

Lexi ZedHip

術中ナビゲーション

AR Hip Navigationシステム

手術時間 約2時間
麻酔 全身麻酔
入院期間 約2~3週間
当院では、退院し自宅復帰された後も外来リハビリを継続し股関節の可動域の改善・筋力強化・生活動作の改善に努めさせてもらいます。

Spine surgery 脊椎外科

当院でおこなっている主な脊椎手術

頚椎 頚椎椎間板ヘルニア
頚椎症性脊髄症
頚椎症性神経根症
頚椎症性筋萎縮症
軸椎歯突起偽腫瘍
胸腰椎 腰椎椎間板ヘルニア
腰部脊柱管狭窄症
腰椎すべり症
腰椎分離症
頚椎・胸椎・腰椎 黄色靱帯骨化症(OYL)
後縦靱帯骨化症(OPLL)
骨粗鬆症 胸腰椎椎体骨折
脆弱性骨盤骨折
椎体骨折後偽関節
脊椎外傷 胸椎破裂骨折

脊椎由来の症状は、手足のしびれ・痛み、下肢痛・脱力からくる歩行障害、上下肢筋力低下など様々なものがあります。さらに全てがくび・こしの神経から来るとも限りません。原因が血管であったり、末梢神経からくるものであったりします。
当院では、それぞれ神経学的検査、画像診断(Xp・MRI ・CT・脊髄造影検査など)を施行し痛み・しびれや筋力低下の原因を探り治療にあたらせてもらっています。
保存加療(内服・コルセット・ブロック注射・硬膜外麻酔等)にて改善が得られず日常生活などに支障がある場合は、手術加療もおこなっています。

頚椎由来の症状

くびで脊髄が圧迫される(頚椎症性脊髄症・頚椎椎間板ヘルニアなど)と、手のしびれ・痛みと歩行障害が出てきます。下記の症状が強くなると悪くなりすぎる前に手術加療が必要になります。

腰椎由来の症状

腰で神経が圧迫(腰部脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニアなど)されると、下肢の痺れ痛みに加えて神経性間欠性跛行が生じます。症状が軽いうちは内服・点滴・ブロック注射などで対応可能です。強くなり、日常生活に支障が生じると手術加療も必要です。

棘突起縦割式椎弓形成術

当院では、頚椎・腰椎の手術において背中の筋肉を温存するために骨より筋肉を剥がさない棘突起縦割式を採用しています。骨から筋肉を剥がすと背中の筋肉の損傷が強くなり術後疼痛などの原因となるからです。


頚椎:No Shinkei Geka 2013 川本俊樹


腰椎:整形外科Surgical technique2019 渡辺航大

BKP(Baloon Kypoplasty:経皮的椎体形成術)

骨粗鬆症による椎体骨折に対して、以前はコルセットつけての安静加療・脊椎後方固定術などの治療がありました。しかし中には安静加療にて腰痛が残存したり廃用性に筋力低下しリハビリに時間がかかることがありました。
その様な中、患者さんに対する負担が少なく早期に骨折の痛みがとれるBKPという骨折部をセメント固定する手術方法がでてきました。骨粗鬆性椎体骨折をした高齢者の方にとっては早期に痛みがとれて、社会復帰に向けて質の良いリハビリが可能となりました。
またいつでも外来等でご相談いただければと考えます。

全身麻酔
手術時間 30分
皮膚の切開 5mmを2カ所 出血ほぼなし

日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
倉 知彦  院長
奥田 哲教 奈良医大 救急科 火曜日 AM 外来 PM 手術
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
三浦 修一 副院長

Bone and soft tissue tumor 骨・軟部腫瘍

<骨腫瘍> 骨にできる腫瘍

<軟部腫瘍> 軟部組織(骨以外:筋肉・脂肪・血管・神経など)にできる腫瘍
・肺や胃、大腸などにできる腫瘍に比較して、発生頻度は少ないですが、骨や軟部組織にも腫瘍は発生します。
・こぶ、できもの、皮膚の膨隆、関節周囲の痛みなどで自覚し発見されます。
・腫瘍の状態によっては、骨折などしてから発見されることもあります。(病的骨折)
・大きさ、形、痛みによっては悪性のこともあり骨軟部腫瘍の専門の先生の診察が必要です。
当院では、二人の骨軟部腫瘍専門の先生が外来しています。

整形外科
水曜日 AM 外来
三井(みい)先生   骨軟部腫瘍専門医
金曜日 AM 外来 PM 手術
朴木(ほおのき)先生 骨軟部腫瘍制御・機能再建医学講座 教授(奈良県立医科大学)

近隣の先生方で疑わしい症例があれば、ご紹介いただければ対応させていただきます。
腫瘍の性状・治療方針によっては、大学病院(奈良医大)と連携し治療させていただきます。

About the number of operations 手術件数について

令和4年度手術件数(7月現在)

2019 2020 2021
全手術件数 732 754 717
骨折観血的手術 282 304 267
上肢 鎖骨骨折 19 14 8
肩関節・上腕骨骨折 12 20 20
肘関節周囲骨折 20 12 13
前腕・手関節周囲骨折 60 62 40
下肢 大腿骨骨折(人工骨頭) 20 31 33
大腿骨骨折(骨接合術) 32 27 26
膝関節周囲骨折 13 16 6
下腿・足関節・足部の骨折 27 33 28
その他 79 89 93
手の外科 45 69 53
植皮(遊離・有茎) 8 7 4
ドケルバン・手の腱の手術 2 9 9
ばね指 14 15 14
神経剥離 肘部管・手根管 9 24 23
その他 12 14 3
人工関節・関節外科 298 244 233
人工関節 膝関節(TKA) 90 83 79
膝関節(UKA) 22 32 37
股関節(THA) 20 17 13
骨切り 高位脛骨骨切り術 28 13 15
関節鏡 鏡視下半月板手術 47 25 31
膝関節靱帯形成手術 16 3 6
習慣性膝蓋骨脱臼 0 2 2
関節鏡検査 42 46 24
肩関節 腱板断裂 7 6 13
肘関節 靱帯縫合・形成 0 1 1
足関節 靭帯縫合・形成 5 4 3
アキレス腱断裂 8 9 6
関節外科その他 13 3 3
脊椎手術 63 89 111
頚椎 前方固定術 0 0 4
頚椎椎弓形成術 7 12 9
腰椎 腰椎椎間板ヘルニア 17 11 10
腰椎椎弓形成術 31 51 45
固定術 腰椎 0 2 8
胸腰椎椎体・骨盤骨折 7 10 11
BKP 20
脊椎外科その他 1 3 4
骨・軟部腫瘍手術 24 37 32
骨腫瘍 良性 7 6 8
悪性 0 0 1
軟部腫瘍 良性 16 20 13
悪性 0 4 8
生検・その他 1 7 2
その他の手術 20 11 21

Information

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診療科目 整形外科・内科・リハビリテーション科 診療時間 整形外科、内科:月~土
午前9:00~11:30(受付時間 8:30~)
整形外科:月火金
午後6:00~ 7:30(受付時間 5:30~)
休診日 日曜・祝日・土曜午後